■Ramaria sp. (ホウキタケ属 No.002)

■ 2022年07月17日 撮影

最初の出会いは2016年のウメムラセミタケ探索中でした。 ヒノキ林地上で見慣れないホウキタケを発見。 先端の色に見覚えがあり、最初はトビイロホウキタケだと思っていました。 しかし発生環境や子実体の形状などから別種であると判断しました。 2022年にようやく顕微鏡観察に踏み切り、間違い無く別種であるとの確信を得ました。 ただトビイロホウキタケと近縁であるのは確かなようです。 小型種のようで、これだけ分岐しても高さは最大5cm程度です。

成長点付近の色が異なるホウキタケ属は複数種存在します。 その中で色の組み合わせ的に最も近いのはトビイロホウキタケです。 別種であることは確実ですが、同じトゲミノホウキタケ亜属であると思われます。


■ 2022年07月17日 撮影

最大の特徴はトビイロホウキタケ同様に先端部がシアン色を帯びることです。 この組み合わせはまさにトビイロのものなのですが、やはり気になるのがその小ささ。 本家トビイロと思しき種も見ているんですが、普通に大きいんですよね。


■ 2022年07月17日 撮影

子実体は普通にホウキタケ型。分岐後の縦方向の伸びが顕著で、立ち上がってる感が強いです。 群生していると不自然な青緑色が目に飛び込んで来てすぐに分かります。


■ 2022年07月17日 撮影

子実体の色は本来淡褐色なのですが、成長点付近が青緑色を帯びます。 このコントラストはかなり印象的なので一度見たら忘れないと思います。 また胞子はオレンジ色で子実体より鮮やかなので、成熟すると全体的に黄色さが増します。 この写真でも股の部分に胞子が積もってオレンジ色になっていますね。

小型で色が色なので食欲は沸きませんが、不明種なので食毒不明。 ホウキタケの仲間は近年有毒種が多数見出されているので注意が必要です。

■ 2016年07月23日 撮影

初めて出会ったのも同じヒノキ林。この時はトビイロホウキタケだと思っていました。 しかしサイズ的に違和感は感じていたので、当時の自分が感じた直感は正しかったみたいです。 ちなみにこの日は晴れ続きだったので林内が乾燥しており、子実体はカサカサ。 胞子も放出し切ったのか、周囲に積もっていました。


■ 2016年07月23日 撮影

晴天のため日照が強くどぎつい色に写ってしまっているのはご容赦下さい。 面白いのはこのオレンジ色の胞子です。 胞子形成前は肌色だったハズですが、胞子が吹き出すとここまで濃い色になるんですね。 それでも先端部はしっかりシアン色なのが面白い。

■ 2022年09月04日 撮影

何気に2016年以降意識して探していなかったこともあり出会いがありませんでした。 なのでちょっと存在を忘れかけていましたが、ウメムラ探しのお陰で久し振りに再会。 それが7月のこと。2ヶ月近く経ってまた発見しました。

■ 2022年09月04日 撮影

う・・・美しすぎる!この色は何なんだ? 幼菌の頃は全体が先端みたいなものなので、子実体全体がシアン色になります。 すでに一部オレンジ色っぽくなっていますが、先端部の色も今まで見て来たものより鮮やか。 こんな凄いものが見れちゃうんだからヒノキ林も侮れませんね。

■ 2022年10月08日 撮影

さて、2022年は本種を何度も見付けました。その中で思い出したこと、それは顕微鏡観察です。 胞子を見れば何か分かるのでは?と言うのは初発見の2016年頃から感じていたこと。 ですが見付けるたびに採取を怠りココまで来てしまいました。今こそ観察の時!


■ 2022年10月08日 撮影

と言うことで子実層面を観察してみました。胞子は・・・ちゃんと出来てますね。 そしてこの段階で見慣れない担子器が見えてテンション上がりました。


■ 2022年10月08日 撮影

担子器は2胞子性で担子胞子を形成する小柄が長いのが特徴的。 でも最も不思議なのは無数の内包物に満たされたこの見た目でしょう。 まるで担子器内部が油球に満たされているかのようです。でも油球にしても色が違うような。 調べるとこのタイプの担子器は本属菌かつ本亜属の特徴みたいですね。


■ 2022年10月08日 撮影

この担子胞子を見て本種がトゲミノホウキタケ亜属であると言う確信を得ました。 胞子紋の色からも分かっていましたが、胞子は黄褐色。卵型で小柄に繋がっていた部分はツンと尖ります。 そして亜属名にもあるように表面に棘状突起がまばらに存在します。 ただ大きさはトゲを含んでも9μm×6μmほどで、トビイロホウキタケよりかなり小さいです。 やはりトビイロホウキタケに近縁な別種と考えて良いでしょう。「ヒメトビイロホウキタケ」とか名前を付けたい気分。
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