■Tricholoma sp. (キシメジ属 No.001)

■ 2021年06月05日 撮影

いつも地元の観察会で使うシイカシ主体の雑木林の限られた場所に発生する謎のキノコ。 調査の結果キシメジ属である事までは判明していますが、いまだ特定に至りません。 私よりずっと詳しい方が詳細に調べても属までしか特定できなかった難物です。 「北海道きのこ図鑑」掲載のオオニガシメジに似てはいるのですが・・・。

実は他の地域でも発見されており、twitter上でも本種と思しき写真を見ることがあります。 先述の通りオオニガシメジに似ているのですが、細部の特徴が異なります。 大型で特徴も多いハズですが、同定に至れない辺り未記載種である可能性は高いでしょう。


■ 2021年06月05日 撮影

傘は表面平滑で湿時やや粘性があり、色彩名「アプリコット(■ #f7b97d)」がしっくり来ます。 穏やかな色合いであると同時にこのような大型サイズのキノコにはあまり無い色のように感じます。


■ 2021年06月05日 撮影

また本種の大きな特徴として、傘の中央や傘に対して同心円状にあばた状の凹みが出来ます。 幼菌の頃は目立ちませんが、この写真でもすでに表面に浮き出し始めており、成熟するとくっきり現れます。


■ 2021年06月05日 撮影

裏返してみました。傘のアプリコッティーな感じがカワイイですね。 傘縁部はやや毛羽立ったような質感で、幼菌時強烈に内側に巻く性質があります。 そのため傘が丸っこく見え、ますます愛らしさが強調されます。


■ 2021年06月05日 撮影

ひだは淡いオンレジ色で密。成熟するとやや淡色になり、分岐や乱れが目立ちます。 柄は白色で部分的に傘と同じ色を帯びる部分があります。 ちなみに香りは爽やかなキノコ臭で不快な粉臭さはありませんが、ややスッとする気がします。


■ 2021年06月05日 撮影

てことで今回はしっかり顕微鏡観察することに!


■ 2021年06月05日 撮影

ひだの切片を顕微鏡観察してみました。 先端が少しトゲトゲしているので期待していましたが、目立ったシスチジアは見付けられなかったです。 これは単に私の観察技術の低さかも知れませんので、もしかするとあったのかも知れません。


■ 2021年06月05日 撮影

子実層面を拡大してみると担子器が結構な数見られます。 基本的には4胞子性ですが、3胞子性がそこそこ混ざっているようです。 これひょっとして担子器とほとんど同じ長さなのがシスチジアなのかな?


■ 2021年06月05日 撮影

担子胞子はキシメジ属菌らしい非常に小さなもの。 楕円形で体積の半分くらいの大きな油球を1個内包します。 シンプルで綺麗な胞子ですね。

当然ですが食毒不明。でもキシメジ属は一応毒キノコも多いですからね。 特に形態的にカキシメジに近縁に見えなくもないので、注意すべきかも知れません。

■ 2013年09月22日 撮影

旧TOP写真です。後ろに見えるゴミがちょっと残念。 この当時は顕微鏡観察もあまりやっておらず、詳しく調べる気はありませんでした。 しかしその後ジワジワと調べたい欲が湧いてきてしまい・・・?


■ 2013年09月22日 撮影

しばらく雨が降っていなかったので傘が乾燥気味で色も少し褪せています。 しかしそのお陰であばたの特徴が顕著に現れていますね。 こうして見ると同心円状にあばたが並ぶ特徴があるっぽいですね。


■ 2013年09月22日 撮影

裏返してみるとこんな感じで束生しています。 ただ必ずしもそうかと言うとそうではなく、普通に単生のものも多く見られます。 なのでこの束生は「なれたらなる」程度の性質かも知れません。

■ 2012年06月30日 撮影

幼菌です。毎年同じ場所に出るので探すのが楽なのはホント助かりますね。 このように幼菌の段階ではオレンジ色が強く美味しそうな外見です。


■ 2012年06月30日 撮影

裏返してみました。幼菌の段階ですでに傘に特徴的なあばたが確認できます。 驚いたのは傘の周囲が巻き込むこと。それにしたって巻き込みすぎですよ。 ご指摘頂いて気付きましたが、この段階だとベニタケ科に見えなくもないですね。

■ 2013年06月22日 撮影

2012年と全く同じ場所です。雨が降っていたので傘が結構退色しちゃってます。


■ 2013年06月22日 撮影

裏側は変わらずこんな色合い。柄に少しささくれのような物が確認できます。 これは同じキシメジ属菌に結構見られる特徴なので属名までは合ってそうです。

■ 2013年09月22日 撮影

この年は本種の当たり年だったようで、雨のタイミングか綺麗な個体が多数。 不思議と雨が降っている時に限って見付かり、濡れた傘しか見てませんでした。 良く見ると左下にえらく派手なキノコが。ベニウスタケに気付かないとは・・・。

■ 2014年06月29日 撮影

梅雨時と秋に発生する本種。これだけ何度も見てるのに未だ正体不明。 ちなみにこのフィールド他にも恒常的に発生する不明種が他に居ます。

■ 2021年06月05日 撮影

2021年は本種の当たり年! いつも出るフィールドではありますが、年によってかなり発生量にバラツキがあります。 今年は幼菌から老菌、綺麗な群生まで一通り揃っており、しっかり観察することができましたね。

■ 2021年06月05日 撮影

老菌になるとこんな感じで象牙色と言って良いほどの淡いアイボリーカラーになります。 若い状態と比べると同一種とはとうてい思えません。傘の縁部も反り返っています。 ただ傘表面のあばたはしっかりと残っています。

■ 2021年06月05日 撮影

TOP写真は成菌にしないとなのでアレにしましたが、正直TOPにしたかった1枚です。 本種の幼菌の愛らしさは異常です。形状もですが色合いが良いんですよねホント。 こんなに小さい状態でも部分的にあばたが形成されているので、本種の代表的な性質で良いでしょう。 あと色素が溶出した水滴が傘に付いていることが多く、色が抜けやすいようです。

■ 2023年06月04日 撮影

9月に見られたこともありますが、圧倒的に6月発生が多いみたいですね。 このタイプのキノコは秋に出るイメージが強いので、その辺もちょっと異質です。 ちなみにこの日時ですでに終わりがけの空気が漂っていたので、発生時期は更に早い可能性。
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