■Tylopilus sp. (ニガイグチ属 No.002)

■ 2020年10月03日 撮影

青fungi氏とのオフ会のハズが目的地への道が工事で閉ざされていてガッカリ。 でも別の場所を探して走っていたらモミの樹下にオニウスタケを発見。 それに盛り上がっていたら意外な出会いがありました。 周囲にはモミの他にもブナ科広葉樹や他種の針葉樹があり宿主は特定できませんでした。 一応モミが一番可能性が高いと思います。何もかもが謎すぎるブラックイグチです。

最初はクロニガイグチだと思っていました。 しかしtwitterに投稿後、傘表皮や胞子の違いを指摘頂き別種であることが判明しました。 そもそもニガイグチ属かどうかも不確かです。現状そうするしか無いかなと。


■ 2020年10月03日 撮影

傘は繊維状で粘性は無く黒色。あまり見慣れない質感です。 ミカワクロアミアシイグチのような褐色系の黒ではなく、 どちらかと言うとメチャクチャ黒い紫色って感じです。


■ 2020年10月03日 撮影

引っこ抜いてみました。柄は傘と同色かやや薄く、そのせいで紫色っぽい感じが良く分かります。 注目すべきは管孔が淡黄色である点です。クロニガイグチはこれで却下となりました。


■ 2020年10月03日 撮影

衝撃的だったのがこの黒変性です。切ったすぐからどんどん暗色に変化します。 黒変性を持つキノコの場合、クロニガイグチもですが最初に赤変、その後に黒変と移行します。 しかし本種は赤くなったと感じず、そのまま黒紫色になった印象を受けました。 こんな変色をする種には出会ったことがありません。


■ 2020年10月04日 撮影

この時は不明種とは思っていませんでしたが、確認のためにサンプルを持ち帰っていました。 でもこれが結果的に本種がクロニガイグチではないことが判明するキッカケになりました。 まずは管孔をスライスして低倍率で観察してみました。 イグチの管孔は生の状態だと薄く切れないので、コレが限界でした。


■ 2020年10月04日 撮影

管孔1つを拡大してみました。管孔内壁に担子器シスチジアがいっぱい!


■ 2020年10月04日 撮影

拡大してみました。担子器の頻度はかなり高いですね。良い成熟度合いのようです。 ただちょっと分かりづらいのでもう少し倍率を上げてみましょう。


■ 2020年10月04日 撮影

と言うことで油浸対物レンズで担子器とシスチジアを拡大してみました。 担子器は4胞子性で内包物が少ないためか透明度が高いです。 時たま3胞子性のものが混じっているようです。 シスチジアは一端の長い紡錘形・・・フラスコ形とも言えますかね。


■ 2020年10月04日 撮影

決定的だったのは担子胞子でした。狭紡錘形で思ったより細長かったのです。 中には無数の不規則なサイズの油球が見られます。 実はクロニガイグチの胞子写真を見せて頂きましたが、もっと短い楕円形で全く違いました。 ここまでの観察結果を踏まえると、クロイグチ、クロニガイグチ、オオクロニガイグチ、 怪しいと思われる黒系イグチのどれとも何かしらの特徴が異なることが分かりました。 特に胞子の形状は決定的な違いと言えるでしょう。思い込みは良くないですね。

当然ですが不明種なので食毒不明です。 味を確かめた気がするんですが忘れちゃいました。 印象に残ってないと言うことは苦くなかったんでしょうか?教えて、過去の自分。
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