Witherite/毒重石
BaCO3


20100202 Cave-in-Rock District, Hardin County, Illinois, U.S.A.

非常に魅力的な鉱物ですが、流通量的にも価格的にも入手困難な鉱物でしょう。
名前が何とも重苦しい響きですね。その名も「毒重石」。危なげなイメージです。
成分は炭酸バリウム。見た目以上に重量が有るため、手に取ると驚きます。
当時の古いラベルが付属し、裏側に「11/15/68」の記載が有ります。
つまり1968年に採取された事が記録されているのです。貴重な標本。


20100202 Cave-in-Rock District, Hardin County, Illinois, U.S.A.

大型標本がほとんど市場に出ませんが、納得の標本を入手できました。
六角柱状結晶が積み重なるように結晶する姿は本鉱らしいと言えます。
本鉱は比重が4.3も有る重い鉱物。黄鉄鉱が5.0である事を考えると・・・。
ちなみにこの標本で重量は400gを超えています。凄い重さですね。


20100202 Cave-in-Rock District, Hardin County, Illinois, U.S.A.

右側の大きな柱状結晶部分だけで直径が4cmも有る大迫力の標本です。
複数の結晶から成っていますが、よく見ると六角形になっています。

本鉱の和名に「毒」と付くのは、その名の通り毒性を持つためです。
レントゲン撮影に用いるバリウムは重晶石と同成分の硫酸バリウム。
本鉱の成分、炭酸バリウムも硫酸バリウム同様、水にほとんど溶けません。
普通に考えれば毒性は発揮されないはずですが、問題は胃酸の存在です。
酸化力の順では炭酸<塩酸<硫酸の順になり、この関係が重要になります。
あとは「弱酸の塩と強酸の反応」を思い出して頂ければ分かりますね。
塩酸よりも強い硫酸と結合した硫酸バリウムは胃液では変化しません。
しかし塩酸よりも弱い炭酸と結合した炭酸バリウムは化学反応を起こします。

BaCO3 + 2HCl → BaCl2 + CO2 + H2O

ここで生じた塩化バリウムは水に溶けるため、有毒のバリウムイオンを生じます。
毒性は決して高くはありませんが、我が国の基準では「劇物」となります。


20100202 Cave-in-Rock District, Hardin County, Illinois, U.S.A.

大きな六角柱の裏側です。こちらにも複数の結晶が付いています。
ほとんどが毒重石で構成された、非常にリッチな標本だと思います。
イリノイ産と言うだけあって、裏側に青紫色の蛍石を伴っています。


20100202 Cave-in-Rock District, Hardin County, Illinois, U.S.A.

毒重石のもう一つの特徴、それは蛍光性です。短波、長波両方で蛍光を示します。
短波だと青白く蛍光します。灰重石に似ていますが、本鉱の方が白っぽく見えます。
長波ではやや青みのかかった乳白色に蛍光し、長波の方が明るく光ります。
知名度は高くないのですが、魅力有り余る鉱物。是非手に取って頂きたい。