■specimen_No.001_M Dodo Mine, Polar Urals, Tyumenskaya Oblast', Russia

Anatase / 鋭錐石・アナテース
□ TiO2

和名は鋭錐石ですが、愛好家の間ではアナテース(アナタース)の名で呼ばれていることが多いです。 その名の通り鋭く尖った錐のような結晶を作るチタンの酸化鉱物です。 個性的な結晶を作り、ヨーロッパなど海外では人気が高いですが、国内では高価なこともあってか流通量はあまり多くありません。 この標本も掘り出し物で運良く安価で入手できましたが、基本的にお値段5桁は覚悟しておかねばならないでしょう。

化学式を見ると既視感をおぼえる方も居られるかと思います。そう、これは石英へのインクルージョンで有名な金紅石(ルチル)と同じなのです。 これは間違いではありません。実は酸化チタン(IV)には「多形(同質異像)」と言う特徴があります。 これは化学式上は全く同じにも関わらず異なる結晶形を持つと言う意味。 本鉱物は金紅石と板チタン石と多形の関係にあり、本鉱物と金紅石が正方晶系、板チタン石は斜方晶系です。


■specimen_No.001_M Dodo Mine, Polar Urals, Tyumenskaya Oblast', Russia

この産地の標本はスモーキークォーツ表面や内部に本鉱物の結晶が見られます。 石英の透明度が高いせいで結晶が浮かんでいるように見えるのがまた何とも。 母岩が透明と言うのは非常に見栄えが良いのですが、撮影となると光の調節が難しいですね。 結晶は遠目に見ると強い金属光沢のせいで不透明に見えますが透明感があります。


■specimen_No.001_M Dodo Mine, Polar Urals, Tyumenskaya Oblast', Russia

強い光を当てて透かしてみると結晶は黄土色と青色が混じり合ったような不思議な色合いをしています。 微細結晶はさわやかな青色ですが、産地によっては褐色の結晶も存在します。 大型結晶も存在しますが、大抵表面が粗面となり透明度も下がります。


■specimen_No.001_M Dodo Mine, Polar Urals, Tyumenskaya Oblast', Russia

あまり名前通りの尖った結晶が見られないので頑張って探してみると、裏側に良い感じの結晶が1つありました。 ただ非常に小さいのが玉に瑕ですけれど。大型で先端の尖った結晶標本は一気に価値が跳ね上がります。


■specimen_No.001_M Dodo Mine, Polar Urals, Tyumenskaya Oblast', Russia

標本の上部に石英にほとんど埋もれた大型結晶があるので拡大してみました。 温度低下によって同時に結晶が生成したためにこのような産状になるのですが、頭では理解していてもやっぱり不思議なものです。 本鉱物が石英の上に乗っていたり軽く埋まっていたりするのは、本鉱物が石英と同じ低温環境で晶出するためです。 より高温環境だと金紅石になってしまい、早い段階で石英に深く内包されてしまいます。

またこの結晶を見ても分かるように本鉱物は先端部分が平らになっていることが少なくありません。 もったいないのでやめて頂きたいものです。




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