■specimen_No.001_M Assuncao Mine, Aldeia Nova, Ferreira de Aves, Satao, Viseu District, Portugal

Autunite / 燐灰ウラン石・オーチュナイト
□ Ca(UO2)2(PO4)2・10-12H2O

隔週刊誌「トレジャーストーン」でその存在を知り、いつか必ず手元に置こう、そう固く心に誓っていました。 原産地はフランスのオーチュン(Autun)で、地名がそのまま学名となっています。 化学式にウランを含んでおり、日本では最も知名度の高いであろう放射性鉱物だと思います。 和名に「灰」とあるように化学式にCaを含む正方晶系の燐酸塩鉱物です。 このCaがCuに置き換わり、水和物の数が変化したものは燐銅ウラン石と呼ばれます。 安全のために我が家では金属缶と鉛シートを貼った板を併用して保管しています。

閃ウラン鉱に比べると放射性は低いですが、本鉱物も大型標本ともなるとかなり強い放射線を放出します。 保存するケースは簡単に開かないような対策が必要ですし、普段の生活範囲からは遠ざけて保管する必要があります。 また取り扱いの際は手袋を用いるなどして手で直接触れるのは避け、粉末などの吸引にも注意しましょう。 放射性鉱物の中では結晶が美しく人気が高いですが、危険な鉱物だと言う認識は持っておくべきです。

放射線量は至近距離(1cm)で約25μSv/h。結晶が少ないため低放射性です。

■specimen_No.001_M Assuncao Mine, Aldeia Nova, Ferreira de Aves, Satao, Viseu District, Portugal

本鉱物が放射性鉱物の中でも人気が高い理由。 結晶が美しいのも当然理由の一つですが、何と言っても蛍光性を持つことでしょう。 短波長波量紫外線で極めて明るい緑色の蛍光を示します。 この危なげな輝きが見る者の心をくすぐるのですが、この蛍光性は放射性とはまた別の問題です。 その証拠にCaがCuに置換した燐銅ウラン石は全く蛍光を示しません。


■specimen_No.001_M Assuncao Mine, Aldeia Nova, Ferreira de Aves, Satao, Viseu District, Portugal

結晶は薄い板状で鮮やかな黄色をしています。これは最も安定性のある+6価のウラニルイオンのイオンの色です。 やや緑色に見えますが、これは蛍光灯光源に含まれる紫外線で蛍光してしまっているためだと思われます。


■specimen_No.001_M Assuncao Mine, Aldeia Nova, Ferreira de Aves, Satao, Viseu District, Portugal

少し拡大してみました。先述の通り本鉱物は放射性鉱物の中でも、そして蛍光鉱物の中でも特に美しい結晶の持ち主です。 特に蛍光鉱物は外見的に地味なものが多いため、愛好家にとっては貴重な存在と言えるでしょう。


■specimen_No.001_M Assuncao Mine, Aldeia Nova, Ferreira de Aves, Satao, Viseu District, Portugal

結晶1枚までクローズアップしてみました。結晶面と内部に成長に伴って直線的な模様ができています。 まるで電子機器の基盤のように見えますね。

■specimen_No.001_M Assuncao Mine, Aldeia Nova, Ferreira de Aves, Satao, Viseu District, Portugal

結晶の集合部分全体の蛍光を見てみるとこんな感じになります。実に幻想的ですね。 この標本No.001は母岩の大きさのわりには結晶の量が少ないため、蛍光する場所も少なく、放射線量も少な目です。 この趣味を本格的に始めて最初に入手した放射性鉱物だったのですが、初心者には最適の標本だったのではないかと思っています。





■specimen_No.002_M Autun, Saône-et-Loire, Bourgogne, France

やはり地名が鉱物名になっているのだから所有しておきたい、と探しに探した原産地オーチュン産の標本です。 標本のほとんどが本鉱物からなるリッチな標本です。 福島原発の事故以前は取り扱っているショップもちらほらみかけましたが、はやり風当たりが強いのでしょうか流通量が減っている気がします。

放射線量は至近距離(1cm)で約250μSv/hの強放射性です。 撮影のためにガイガーカウンターを近くに置いて電源を入れていましたが、ずっとブザーが鳴りっぱなしでした。 本鉱物は放射性鉱物の中では放射性は強くないと聞いた覚えがありましたが、それは閃ウラン鉱などと比較した場合。 純粋に本鉱物の量が多くなると線量も増えるのですね。


■specimen_No.002_M Autun, Saône-et-Loire, Bourgogne, France

コンパクトにまとまっていながらも複数の産出状態が見られるお得な標本です。 手前側には板状の結晶が見られますが、奥側の結晶はまた雰囲気が少し違いませんか? 実はこれは板状結晶が積み重なって厚みが増したもので、本鉱物が「ウラン雲母」と呼ばれる理由です。 類似化合物でも見られますが、雲母と同じのように薄く剥がすことができます。

■specimen_No.002_M Autun, Saône-et-Loire, Bourgogne, France

標本のほとんどが本鉱物のため、蛍光も見事です。 蛍光性も強く、遠く離れた場所でブラックライトのスイッチをONにすると薄ぼんやりと蛍光しているのが分かる時があります。

■specimen_No.002_M Autun, Saône-et-Loire, Bourgogne, France

結晶が層状になっている部分の蛍光も同じですが、良く見ると層の中央付近があまり蛍光していません。 通常光源で見てみると周囲に比べて明らかに緑色になっているので、ひょっとすると燐銅ウラン石に置換されているのかも知れません。 同じ放射性鉱物のスクロドフスカ石でも同じような現象が起きるみたいですので。





■specimen_No.003_S Midnite Mine, Turtle Lake, Deer Trail District, Stevens Co., Washington, U.S.A.

アメリカ合衆国のミッドナイト鉱山産の微細な結晶が見られるサムネイルサイズ標本です。 小型ゆえに取り扱いが容易で、出し入れが面倒な他の標本よりもずっと出して眺める機会が多い標本です。 ただし結晶が小さく脆いため衝撃で簡単に1つ2つ落ちてしまうため、金属缶の中のクッション材を多めに入れています。

放射線量は至近距離(1cm)で約75μSv/h。標本No.001よりも強いようです。 本鉱物自体は多くありませんが、母岩に強放射性の鉱物が含まれている可能性はあります。


■specimen_No.003_S Midnite Mine, Turtle Lake, Deer Trail District, Stevens Co., Washington, U.S.A.

結晶は大きさのわりには厚みのある板状結晶で、不規則に、そして適度に間隔を空けて母岩に付いています。 母岩が暗褐色~黒色のため明るい色合いの本鉱物が目立って観賞価値も上がっています。 このような産状は本鉱物としてはあまり一般的ではありません。

■specimen_No.003_S Midnite Mine, Turtle Lake, Deer Trail District, Stevens Co., Washington, U.S.A.

私が頻繁にこの標本No.003を取り出して鑑賞してしまう理由、それはこの蛍光時のロマンチックさにあります。 本鉱物は多くの場合結晶が不規則または層状に折り重なって一つの集合体になっていることが多いのです。 ですがこの標本は結晶一つ一つの隙間が広いため、紫外線を当てるとまるで星空のように輝くのです。 そのため気が向いたら取り出して蛍光を見、満足したら片付けると言う行動を繰り返しています。

■specimen_No.003_S Midnite Mine, Turtle Lake, Deer Trail District, Stevens Co., Washington, U.S.A.

高倍率のマクロレンズにて撮影し何とか結晶の姿を捉えられました。 高倍率では光量が足りなくなるため長時間露光が難しいのですが、蛍光性が強いため難なく成功。 単結晶ではなく複数の板状結晶が花のように広がっていたのですね。




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