■specimen_No.001_M Chatian Mine, Chatian ore district, Chatian Hg-Zn ore field, Fenghuang Co., Xiangxi Autonomous Prefecture, Hunan Province, China

Cinnabar / 辰砂
□ HgS

初めて購入したのはデパートの鉱物コーナーで売られていたサムネイル標本でした。 その後その色と輝きに魅了され、産状が美しいことに定評がある中国の茶田鉱山産の標本を購入しました。 化学式は硫化水銀(Ⅱ)。化学式に水銀を含む三方晶系の硫化鉱物であり、赤色顔料「朱」の原料でもあります。 海外産の標本が多く流通していますが、我が国でも三重県や奈良県、北海道などで良質な標本が産出していました。 中世ヨーロッパで「賢者の石」と呼ばれたり、中国で不老長寿の薬とされていたのも本鉱物です。

水銀と言うと警戒してしまいますが、本鉱物は水に溶けにくいためそこまで慎重になる必要はありません。 ただし産地によっては金属状態の自然水銀をともなう場合があるため、そのような標本は管理に注意が必要です。 頑丈そうな見た目に反してモース硬度が2~2.5と非常に低く、結晶の破損にも気をつけましょう。


■specimen_No.001_M Chatian Mine, Chatian ore district, Chatian Hg-Zn ore field, Fenghuang Co., Xiangxi Autonomous Prefecture, Hunan Province, China

標本No.001の産地である茶田鉱山産の標本が美しいのは母岩が白色の苦灰石からなるのが理由です。 本鉱物は自然水銀を伴う赤色の塊状で産出することもありますが、この産地は標本全体が美しいので人気があります。

■specimen_No.001_M Chatian Mine, Chatian ore district, Chatian Hg-Zn ore field, Fenghuang Co., Xiangxi Autonomous Prefecture, Hunan Province, China

本鉱物は蛍光灯や自然光の光源下で見ると金属光沢を持っており不透明に見えますが、白熱電球光源下では見えかたが異なります。 なんと不透明に見えた結晶が真っ赤に透けて見えるのです。 同じような現象は赤銅鉱や金紅石でも見られます。 表面の照りが強すぎるため分かりづらいですが、結晶に透明度があるのがこれで分かると言うわけです。


■specimen_No.001_M Chatian Mine, Chatian ore district, Chatian Hg-Zn ore field, Fenghuang Co., Xiangxi Autonomous Prefecture, Hunan Province, China

結晶を拡大してみました。化合物となってもこれだけの光沢を持つのは流石水銀と言うべきでしょうか? 本鉱物は400~600℃に加熱することで硫黄が酸素と結合して金属水銀と二酸化硫黄に変化します。

化学式:HgS + O2 → Hg + SO2

単体の水銀の沸点は356.73℃のため、この段階では水銀は蒸気となっており、これを冷やすことで金属水銀を得ることができます。 設備の違いはあれど水銀の精錬方法は今も昔もこの手法をとっています。 顔料やメッキのみならず様々な分野で必要不可欠な水銀ですが、この趣味をやっていると美しい結晶が失われてしまうのは少し残念な気がします。




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