■specimen_No.001_M 長崎県 長崎市 高島町 端島(軍艦島) 端島炭坑

Coal / 石炭
□ C

化学式を「C」と表記しましたが、全て炭素で構成された石墨とは異なり微量の水素、酸素、窒素、硫黄を含みます。 適切な表記方法を見付けられなかったので、これでご容赦下さい。 約3億万年前と言うはるか昔、石炭紀と呼ばれた時期に植物が池や沼の底に腐敗分解する前に堆積し、 それが地熱や圧力によって変質(石炭化)したとされています。つまりは炭化した植物の化石です。 石油や天然ガスと共に代表的な化石燃料であり、現在でも世界中で高い需要がありますが、 燃焼時に膨大な温室効果ガスである二酸化炭素を放出するため問題になっています。

石炭は石炭化度によって呼び名が異なり、標本No.001は最も石炭化が進んだ「無煙炭(Anthracite)」です。 無煙炭は90%以上の炭素を含んでおり、良質な石炭として産業的価値が高いです。 無煙炭を基準に石炭化度を下げるて行くと、「石炭」と言えば基本的にこれを指す70~75%の「歴青炭」、 60%以上の「褐炭」、それ以下の「亜炭」などなど。 園芸用土として使用される泥炭(ピート)もその下位に位置します。 実際にはもう少し細かく分かれるので詳しくはネット等で調べてみて下さい。


■specimen_No.001_M 長崎県 長崎市 高島町 端島(軍艦島) 端島炭坑

そもそも触れておかなくてはならないのはこの標本の産地です。何とあの「軍艦島」なんですよね。 正式名は端島であり、1800年代初期にはすでに発見されていました。 それから採掘が本格化したのは三菱が島と権利を買い取り採掘を開始した80年ほど後のこと。 高品質の石炭は高く売れるため、労働を求めて集まった人々によって島は急発展を遂げ、 記録では1960年には狭い島内に5,267人もの人々が暮らしていたそうです。

現在は廃墟の島と化し、当時の栄光を象徴する施設は経年劣化で崩壊を続けています。 危険なため島内は立入禁止であり、当然ながら石炭を採取することはできません。

それにしても「黒いダイヤ」と呼ばれただけあって、石炭化率の高い無煙炭は美しいですね。 表面には金属光沢にも似た強い照りがあり、文字を書いて滑らかにすり減った鉛筆の芯のようです。 繊維状に見える部分がありますが、植物体の名残りでしょうか。


■specimen_No.001_M 長崎県 長崎市 高島町 端島(軍艦島) 端島炭坑

どちらかと言えば化石サイドな石炭ですが、やはりこの炭素の光沢は鉱物寄りの魅力ですよね。 純粋な炭素ではないにせよ、これがダイヤモンドと同じ元素から成ると言うのが化学の面白さでしょうか。 無煙炭の比重は1.32~1.7で、手に持つと見た目以上に軽いので驚きます。原子量小さいですもんね。 なお硬度は2~2.5と思った通りの軟らかさ。

軍艦島の石炭なんて入手したら、とりあえず石炭としての別標本を持つ気はあまり起きないですね。 個人的には最高の標本を入手しちゃった気分なので。




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