■specimen_No.001_M Taouz, Er Rachidia Province, Meknes-Tafilalet Region, Morocco

Goethite / 針鉄鉱・ゲーサイト
□ FeO(OH)

学名はかの有名なドイツの文豪「ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)」に由来します。 ゲーテは鉱物にも興味があり、彼の標本の中にあったことが学名命名の由来だとされています。 ただその元となった鉱物は実は本鉱物ではなかった、と言う説が有力です。 斜方晶系の水酸化鉱物で、黄鉄鉱や磁鉄鉱などの鉄を含む鉱物が酸化することで生じる二次鉱物です。

本鉱物は結晶の形状や仮晶現象などによって様々な呼び名が存在します。 結晶の形状で代表的なものは和名の通りの針状結晶なのですが、 極めて微細な針状結晶が放射状に広がることで仏頭状になるものや、 その仏頭状の結晶表面に酸化皮膜が形成することで光が干渉して虹色に輝く「虹の石」が有名です。 他の鉄鉱物を置換することでも知られ、代表的なものだと黄鉄鉱を置換した「武石」や、 白鉄鉱を置換した「エジプトの星」が存在します。 また微細な繊維状の本鉱物が石英中にインクルージョンしたものは「ストロベリークォーツ」と呼ばれます。 コレクション性が高い鉱物なので好きな産状の標本は揃えておきたいものです。

ちなみに酸化が進み、天然の赤さびとなったものは褐鉄鉱(Limonite)と呼ばれます。 ただこの鉱物は鱗鉄鉱の酸化でも生じるので、本鉱物のみを指すわけではありません。


■specimen_No.001_M Taouz, Er Rachidia Province, Meknes-Tafilalet Region, Morocco

標本No.001は本鉱物の代表的な仏頭状の結晶です。 ボコボコと生物的な盛り上がり方をしていると同時に、驚異的な鏡面状光沢を持ちます。 実は最初に撮影した際は撮影者の手が写り込んでしまい、撮影し直したほどの映り込みを誇ります。 そのため再撮影時はカメラを三脚で固定して管理人は少し離れてリモコンでシャッターを切ったほどです。


■specimen_No.001_M Taouz, Er Rachidia Province, Meknes-Tafilalet Region, Morocco

この滑らかな形状を見ると、「どこが針なんだ」と突っ込みを入れたくなるかと思いますが、 断面を見ると納得感しかありません。この標本は採取時に部分的に切り出されているのですが、 仏頭状の膨らみの断面は見事に放射状になっています。 非常に細い結晶が隙間無く放射状に成長したためにこのような断面になったと言うわけですね。





■specimen_No.001_LL Llanos de Arenalejos, Carratraca, Málaga, Andalucía, Spain

本鉱物の標本を収集するにあたり、確実に所有しておきたいと考えていたのが仮晶標本です。 特に黄鉄鉱仮晶は元となった鉱物の形状が綺麗に残るので最優先で探しました。 国産鉱物では「武石」と呼ばれるものが存在しますが、基本的に単結晶で産出します。 管理人は大型標本が欲しかったので、満足できる標本に出会うのには意外と時間がかかりました。 管理人も満足のキャビネットサイズ標本です。

このような大型の黄鉄鉱仮晶標本はほとんどがリャノス・デ・アレナレホス(Llanos de Arenalejos)産です。 ただこの産地のものは表面が褐鉄鉱化しており、全体的に赤錆色をしています。 ですが内部はしっかりと針鉄鉱であり、擦れた部分などは金属光沢を放ちます。 薬品処理で褐鉄鉱だけを取り除けば綺麗になりそうですが、それはそれでこの産地の魅力が無くなります。


■specimen_No.001_LL Llanos de Arenalejos, Carratraca, Málaga, Andalucía, Spain

この標本No.002は黄鉄鉱のクラスターが全て本鉱物に置き換わったもの。 その表面が酸化したことで褐鉄鉱に変化して全体的に赤茶色になっています。 形状は見慣れた黄鉄鉱の六面体結晶なので、その違和感が凄まじいんですよね。 この写真右の微細な結晶部分が個人的には大好きです。


■specimen_No.001_LL Llanos de Arenalejos, Carratraca, Málaga, Andalucía, Spain

この標本の面白さは何と言っても元となった黄鉄鉱結晶のサイズのばらつきと貫入具合です。 特に大きな結晶に微細な結晶が散りばめられるように貫入しているのが良いですね。 これは置換される前の黄鉄鉱の状態でも観賞価値が高いでしょうね。 でもそれが本鉱物に置き換わり、そして錆びてしまった、時間の流れを感じます。


■specimen_No.001_LL Llanos de Arenalejos, Carratraca, Málaga, Andalucía, Spain

部分的に褐鉄鉱化があまり進んでいない部分が存在し、その部分は鈍い輝きを放っています。 実は黄鉄鉱仮晶は表面が酸化せず褐鉄鉱化していない標本がたまに流通します。 全体が金属光沢を放ち非常に格好良いのですが全然流通しないんですよね。いつかは手元に置きたいものです。




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