■specimen_No.001_LL Lake Charm, Gannawarra Shire, Victoria, Australia
■ Gypsum / 石膏・ジプサム
□ CaSO4・2H2O
硫酸塩鉱物の代表とも言える存在。鉱物に詳しくなくても、その名前はご存じの方が多いでしょう。
代表的な物と言えば石膏像や石膏ボード、ギプスなど。結晶は単斜晶系で、モース高度2の基準鉱物となっています。
成分的には硫酸カルシウムですが、水和状態によって呼び名が異なるほか、
鉱物としてもその産出形態によって様々な名前を持ちます。
人類に馴染みある鉱物なだけあって様々な呼び名が存在します。
化学的には水和水の数によって0.5個のものは半水石膏(焼石膏・バサニ石)、
水和水を持たないものは無水石膏(硬石膏)と呼ばれます。
そして最も一般的なものが二水和物の二水石膏であり、一般的に「石膏」とはこの二水石膏を指します。
半水石膏は水と反応して二水石膏となり固化するため、ギプスなどに使用され、薬局でも販売されています。
また二水石膏を加熱することで半水石膏へ変化させることも可能です。
二水石膏の用途は多く、建築資材としての石膏ボードや石膏プラスターのほか、生薬などにも使用されます。
無水石膏は鉱物としても産出しますが、特に利用はされていません。
また様々な産状を有し、それぞれに別々の名前が存在します。
透明度の高い透石膏(セレナイト)、繊維状結晶が重なった繊維石膏(サテンスパー)、
微細結晶の集合体の雪花石膏(アラバスター)、恐らく知名度では最も高いであろう砂漠の薔薇(デザートローズ)など。
一番最後は石膏のみの呼び名ではないですが、美しいものは本鉱物由来のものが多いでしょう。
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■specimen_No.001_LL Lake Charm, Gannawarra Shire, Victoria, Australia
オーストラリアのレイク・チャーム(Lake Charm)産のキャビネットサイズ標本です。
周辺地図を見ると「Cumco Gypsum」と言うそのまんまの名前の鉱山が存在しており、
この地域で本鉱物が豊富に産出することが容易に想像できます。
石膏としては一番最初に標本No.002を購入したのですが、大きな標本が欲しかったんですよね。
多数の起点から放射状に透明な結晶が成長し、花が咲いたような美しい標本です。
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■specimen_No.001_LL Lake Charm, Gannawarra Shire, Victoria, Australia
この標本は無数の放射状結晶の集合体となっており、1つ1つの結晶も極めて透明度が高いです。
ジャンル的には透石膏に含まれるのでしょうが、そうだとすると結晶自体は比較的小型です。
ただ結晶が様々な方向を向いているため、光を当てるとキラキラ輝いて素晴らしい光景が見られます。
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■specimen_No.001_LL Lake Charm, Gannawarra Shire, Victoria, Australia
標本の裏側は表側とは異なり結晶のサイズに統一感が無く、太い結晶と細い結晶が混ざり合っています。
この無骨な感じも雰囲気が違って好きですね。鑑賞する際はぐるぐる標本を回してしまいます。
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■specimen_No.001_LL Lake Charm, Gannawarra Shire, Victoria, Australia
本鉱物は蛍光性を持つものが多く、特にゴールデンセレナイトなどではかなり強い蛍光が見られます。
この標本でも蛍光は見られますが、透明度が高いものではあまり明るさは期待できません。
それでも長波紫外線を照射すればそこそこの明るさの蛍光は確認できます。
小さな結晶では紫外線そのものの色に負けていますが、太い結晶だと黄緑色っぽく蛍光しているのが確認できます。
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■specimen_No.002_LL Naica Mine, Naica, Mun. de Saucillo, Chihuahua, Mexico
一番最初に購入した標本です。透石膏と呼ぶに相応しい、とてつもない透明度を誇る標本です。
と言うのも、この標本はかの有名なナイカ鉱山(Naica Mine)産の標本なのです。
鉱物に詳しくない方でも「クリスタルの洞窟」と聞けば写真くらいは見たことがあるでしょう。
あの伝説の鉱山から産出した由緒正しき標本です。
実はこの標本、購入時の産地表記は「San Antonio Mine, East Camp, Santa Eulalia, Chihuahua, Mexico」となっていました。
しかしサン・アントニオ鉱山(San Antonio Mine)産の本鉱物とは産状が一致しないため調べてみることに。
すると黄色い微細な犬牙状方解石と共生するのはナイカ鉱山の特徴であることが判明。
確かにここまで透明度の高い結晶はナイカ以外で見られるとは考えにくいですし、
画像検索するとこれと同じナイカ産の共生鉱物標本を多数見ることができます。
ちなみにサン・アントニオ鉱山も同じチワワ州で、ナイカ鉱山から90kmほど離れた場所にあります。
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■specimen_No.002_LL Naica Mine, Naica, Mun. de Saucillo, Chihuahua, Mexico
結晶の先端を拡大してみました。とても自然に出来た結晶とは思えない、驚異的な透明度です。
結晶自体も巨大で、長さ10cmの大きな単結晶が2本平行に並んでいてボリューム感も凄いです。
結晶1本でこの大きさだと感覚が狂いますね。
手前に見える橙黄色の部分は微細な犬牙状の方解石で、更に表面を黄色い方解石が覆っているようです。
この産地の代表的な共生鉱物のようです。
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■specimen_No.002_LL Naica Mine, Naica, Mun. de Saucillo, Chihuahua, Mexico
反対側から見てみました。結晶は母岩から引き剥がした際のクラック以外はほぼ無傷で非常に状態が良いです。
透明度の高さと結晶面の平滑さから内部で光を反射し、鏡のように黄色い方解石が写り込んでいます。
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■specimen_No.002_LL Naica Mine, Naica, Mun. de Saucillo, Chihuahua, Mexico
透明度があまりにも高いので結晶2個を通して見ても向こう側の文字を読むことができます。
ここまで透明かつ結晶面が乱れていないのは、非常にゆっくりと結晶が成長したことを意味します。
ナイカ鉱山のクリスタルの洞窟内部はヒトが長時間留まれないほどの超高温多湿であることは知られていますが、
それは元々内部が熱水に満たされており、水を抜いたことでようやく中に入ることができたためです。
熱水中でゆっくりと結晶が成長したことでここまで大きくなれた、と言うわけです。
確かにミョウバンの再結晶実験も少しずつ温度を下げるほうが大きく透明な結晶になりますしね。
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■specimen_No.002_LL Naica Mine, Naica, Mun. de Saucillo, Chihuahua, Mexico
長波紫外線を当ててもほとんど光源からの光の反射しか見えませんが、短波紫外線だと少し動きが見られます。
一応若干蛍光している気がしないでもないですが、透明度の高い無色の本鉱物はほとんど蛍光しません。
同じく高い透明度を誇るゴールデンセレナイトはかなり強い蛍光性があるんですけどね。
ただ共生鉱物の方解石が真っ赤に蛍光するため、これはこれで結構綺麗です。
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■specimen_No.003_L Samalayuca Desert, Juarez, Chihuahua, Mexico
砂漠の薔薇(Desert Rose)と言えばサマラユカ砂漠(Samalayuca Desert)と言うくらいこの産地のものが多く流通しています。
球体の結晶集合体1個のみがバラ売りされていることが多く、
大型のものも置物的な商品価値があるため人気が高いです。価格も安価で入手が容易なのも嬉しいですね。
一応キャビネットサイズに近いですが、無理矢理Lサイズに納めています。
実は「砂漠の薔薇」には石膏タイプと重晶石タイプが存在し、1種類の鉱物を指す呼び名ではありません。
結晶化の際に周囲の砂を巻き込みつつ成長するため、基本的には透明感がありません。
石膏タイプはまだ透明感が感じられますが、重晶石タイプはほぼ砂の塊になっています。
結晶化するためには水の存在が必要であり、かつて砂漠に水があったことの証拠と言われています。
個人的には石膏タイプのほうが諸々の事情により好きですね。
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■specimen_No.003_L Samalayuca Desert, Juarez, Chihuahua, Mexico
砂漠の薔薇と言う先入観を捨ててこの結晶を見てみてください。何か既視感がありませんか?
そう、セレナイトボールに瓜二つなんです。砂漠の薔薇はいわば「砂の混じったセレナイトボール」なんですよね。
ただ結晶の大きさは一定で、セレナイトボールに見られる大型の結晶はほとんど見られません。
あと形成されるのが乾燥地帯のため風化の影響を受けやすく、結晶の端は白くなっています。
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■specimen_No.003_L Samalayuca Desert, Juarez, Chihuahua, Mexico
重晶石タイプとの大きな違いは結晶に砂が交じる割合です。
石膏タイプはご覧の通り結晶内部にはあまり砂粒が混ざっておらず、表面に付着したり結晶の隙間に詰まっている感じです。
一方の重晶石タイプは結晶内部に万遍無く砂粒が混ざり合い、結晶の形をした砂の塊と言った見た目になっています。
この点からも見た目の美しさの点では石膏タイプに軍配が上がるかと思います。
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■specimen_No.003_L Samalayuca Desert, Juarez, Chihuahua, Mexico
砂漠の薔薇と言えばその珍妙な見た目が注目されがちですが、私が好きなのは蛍光性です。
ゴールデンセレナイトに似ているのですから、当然ですが蛍光します。
こちらは短波紫外線での蛍光の様子です。あまり明るくはなく青みが強く見えます。
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■specimen_No.003_L Samalayuca Desert, Juarez, Chihuahua, Mexico
そしてこちらが長波紫外線による蛍光です。クリーム色で明らかに短波紫外線照射時より明るいです。
蛍光の仕方はゴールデンセレナイトそのまんまですね。
砂漠の薔薇はあまり蛍光について触れられることが無いのが不思議ですね。こんなにも魅力的なのに。
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■specimen_No.003_L Samalayuca Desert, Juarez, Chihuahua, Mexico
何よりも好きなのがこの配色。砂漠の薔薇は結晶の隙間に石英質の砂粒が詰まっています。
当然石英には蛍光性が無いため、その部分だけは紫外線を反射して青紫色に見えます。
そのため結晶の球状集合体中央だけは青紫色で、それ以外はクリーム色の蛍光が見られ、
中央と周辺で色が異なるため花のように見えるのです。
鉱物標本的にはどちらかと言えば一般向けな砂漠の薔薇ですが、
良質の標本は蛍光鉱物としてもかなり優秀だと思っています。
コレクターの方にもおすすめですよ。
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