■specimen_No.001_L Imiter Mine, Anti-Atlas Mts, Dades Region, Morocco

Proustite / 淡紅銀鉱
□ Ag3AsS3

金属の硫化鉱物は黄鉄鉱や方鉛鉱など金属光沢を持つものが多く、 比較的透明度の高い辰砂でも白熱灯光源でないと赤い色は透けて見えません。 しかし銀の硫化鉱物である本鉱物ははっきりと透明感が感じられます。 「As」が「Sb」に置換された濃紅銀鉱と共に「ルビー・シルバー」と呼ばれ、 スカーレッドレッドの美しい色合いのためカッティングされることもあります。 しかし諸々の理由により宝石としての価値はありませんが。

結晶は三方晶系で透明感のある暗赤色ですが、同時に表面には金属光沢があります。 モース硬度は2~2.5と非常に低い上に、銀化合物であるがゆえに光によって光化学反応を起こします。 長時間強い光にあててしまうと感光したように黒く劣化してしまうため、少しでも長く美しい姿を維持したければ、 常時鑑賞できるショーケースではなく、光の当たらないキャビネット等に保管しましょう。


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美しい標本の産地となるとモロッコのイミテル鉱山(Imiter Mine)が世界一と断言して良いでしょう。 しかしこの鉱山、何とモロッコ王家が所有しており、標本の持ち出しが厳しいのが難点です。 そのため標本は質を問わず高額になりがちで、小型のクラスター標本でもお値段5桁が当たり前。 購入当時の2010年頃でも高級品の部類でしたが、その後ずっと値上がりが続いている印象です。


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この産地の標本は方鉛鉱と共生しているのが特徴で、標本の大きさのわりには重量感があります。 共生鉱物としてはこの鉱山が原産地であり、鉱山の名前も冠するイミテル鉱があるのですが、 隅々までルーペで探しましたが見付かりませんでした。ちょっと残念。


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結晶自体はかなり小さいので観察にはルーペ、撮影にはマクロレンズが必需品。 しかし結晶の小ささなどどうでも良くなる、息を飲むような美しさです。 表面に金属光沢があるので透過率は下がるのですが、それでこの赤色の濃さです。 脆い上に光に当てられない時点で宝石としての価値など皆無なのですが、 それが分かっていてもカットしたくなる気持ちは理解りますね。

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辰砂や赤銅鉱などでも見られる現象ですが、白熱灯光源だと赤色が鮮やかになります。 白熱灯光源のほうが蛍光灯やLED光源より結晶を透過しやすいのが理由のようです。 金属光沢が強い鉱物だとその変化が分かりやすいのですが、 本鉱物は元々透明度が結構高いので、そこまで劇的な変化とは感じませんが。


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標本の何ヶ所かに小さな穴が空いており、その内部で晶洞のように本鉱物が生成された場所があります。 この位置はちょうど母岩の陰になっていて、結晶が映えるように設置した場合光が当たりません。 こうして見ると光に当たらないだけで結晶の綺麗さがここまで維持されるのですね。感光性も侮れません。


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1個の標本で7枚も撮影してしまいましたが、結晶が多くて良い被写体となる角度が多いんですよね。 非常に魅力的な鉱物なのですが、入手機会も少なく、鉱物標本的にはかなり高価な部類に入ります。 それでも管理人は手元に置く価値のある鉱物だと断言します。良い標本を見たら迷わないほうが良いですよ。




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