■specimen_No.001_M Kipishi Mine, Katanga, Dem. Republic of Congo

Rutile / 金紅石・ルチル
□ TiO2

金紅石の名よりも圧倒的に学名のほうで呼ばれることが多いのではないでしょうか。 化学式は酸化チタン(IV)。正方晶系の結晶を作る代表的なチタンの酸化鉱物です。 恐らくあまり鉱物について詳しくない方でもその名は耳にしたことがあるのでは? 本鉱物単体では比較的地味ですが、近年では「太陽ルチル」と呼ばれる美しい産状の標本も多く出回っています。 また宝石内に取り込まれることで付加価値を生むことでも知られています。

本鉱物がもたらすもの、それは繊維方向に対して直角に交差するように1本の光の筋が浮き上がるキャッツアイ効果(シャトヤンシー)です。 分かりにくい場合は切りそろえた前髪に横方向の光の筋が入る光景を想像して頂ければ良いかと思います。 本鉱物を含む宝石をカボションカットすると、猫の目のような一本の光が現れます。 これが金緑石の場合、かの有名なクリソベリルキャッツアイになると言うわけです。 また三方向に本鉱物の結晶が伸びている場合は三本の光の線が交差するように浮かび上がるスター効果を発揮します。


■specimen_No.001_M Kipishi Mine, Katanga, Dem. Republic of Congo

白色半透明の石英の母岩上に本鉱物の結晶が複数見られます。 本鉱物と言えば石英内部にインクルージョンした金色の繊維状結晶が有名だと思います。 しかし和名に「紅」の文字があるように、本鉱物は単体で生じると暗赤褐色の金属光沢を持った結晶になります。 そして細長い針状結晶になった場合は黄金色の見慣れた姿になると言うわけです。


■specimen_No.001_M Kipishi Mine, Katanga, Dem. Republic of Congo

酸化チタン(IV)の化学式を持つ鉱物と言うと鋭錐石と板チタン石が存在します。 これは「多形(同質異像)」と呼ばれる現象で、本鉱物と鋭錐石は正方晶系、板チタン石は斜方晶系です。 ただこの化学式を見るとたいていは真っ先に本鉱物の名前が浮かぶと思われます。 また産出量が多いためチタンの主要な鉱石鉱物として工業的にも価値があります。


■specimen_No.002_SS Diamantina, Jequitinhonha Valley, Minas Gerais, Brazil

ブラジルのミナス・ジェライス州で産出する本鉱物の双晶標本です。 偶然激安で売られているのを発見し購入しました。微細な結晶が互いに双晶となって網目状になるのがこの産地の特徴です。 本来は母岩に貼り付くように形成されるのですが、この標本は母岩から剥がされた状態で販売されていました。


■specimen_No.002_SS Diamantina, Jequitinhonha Valley, Minas Gerais, Brazil

この産地の結晶は平面的に形成されるため厚みがあまり無く、後ろから強い光を当てると結晶が透けて真っ赤に見えます。 本来酸化チタン(IV)は無色透明な結晶ですが、自然界では不純物の影響で透明度が下がります。 また酸化チタン(IV)の結晶の屈折率は2.62~2.90とダイヤモンドの2.42よりも高いため、イミテーションとして人工合成された歴史があります。 ただしモース硬度が6~6.5と低いことや、より輝き方の似ているチタン酸ストロンチウムの登場により廃れてゆきました。




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